ナビゲーター:楠木かなえ
こんにちは!薬剤師の転職をサポートしている楠木かなえです。
今回は、「タイプ別薬剤師適職診断」を通じて自分自身の本当の強みと苦手に気づき、調剤薬局の管理薬剤師から「救急病院」という全く新しいフィールドへの転身を成功させたSさんの体験談をご紹介します。「自分は今の職場のトレンドに合っていないのでは…」と悩む薬剤師さんの大きなヒントになるはずです!
Sさんの悩み:慕われる管薬の「誰にも言えない焦り」
Sさんは、大手調剤チェーンで働く薬剤師8年目。現在の店舗に異動して管理薬剤師になり、1年ちょっとが経った頃でした。
持ち前の聡明さと、テキパキと的確に仕事をこなす姿勢から、従業員からは「頼れる管理薬剤師」として慕われていました。……そう、“従業員”からは、です。
そんな優秀なSさんには、最近どうしても頭から離れない大きな悩みがありました。それは、「かかりつけ薬剤師の同意(算定)が未だに1件も取れていない」ということです。
昨今の調剤報酬改定の流れを見ても、薬局は加算関連をしっかり頑張っていかないと経営が危うくなってしまいます。僕は管理薬剤師なので、店舗のみんなに『かかりつけの算定を取ろう』と指示を出す立場です。
それなのに、言い出しっぺの自分自身がゼロ件では、全く示しがつきません。なぜ自分だけ取れないんだろう…と焦るばかりでした。
なぜ、仕事ができるSさんが算定を取れないのでしょうか?自分自身でじっくり振り返ってもらったところ、Sさんには思い当たる原因が1つありました。それは、「患者さんとの深い信頼関係の築き方や、寄り添うようなコミュニケーションの取り方がよくわかっていない」ということでした。
Sさんが新人の頃は、まだ今ほど「対人業務」をうるさく言われている時代ではありませんでした。とにかく忙しい店舗に配属されたため、まずは処方箋をスピーディーかつ安全にさばくことを叩き込まれました。
さらに、1年経つか経たないかの短いスパンで頻繁に異動することが多かったため、一人の患者さんとじっくり関係性を作っていく機会に恵まれることもなく、また次の店舗へ…という日々を送ってきたのです。
「そんな環境で育ったからか、自分自身が『対人業務よりも、いかに店舗を回すかというマネジメント寄り』が得意な人材に育ってしまったことは確かだと思っていました。元々、感情に寄り添うようなコミュニケーションが得意なタイプではない自覚はありましたが、頻繁な異動という環境がそれをさらに助長してしまったんです」
なぜこの悩みを抱えてしまうのか? -タイプ診断から分析-
そこで、Sさんに当サイトの「適職診断ツール」を受けてもらったところ、Sさんの性格は【冷静に勝機をみる策士】タイプであることが判明しました。
💡 冷静に勝機を見る策士タイプの特徴
感情よりも「論理」が先行する傾向があり、どんな時も冷静沈着に物事を分析する力に長けています。効率化やシステム構築、管理薬剤師としての店舗マネジメントを行うにはまさに「ぴったりの性格」です。一方で、コミュニケーション面においては他者の「感情」を読み取ったり寄り添ったりすることが後回しになりやすい傾向があります。また、新しい環境に馴染むのに少し時間を要する性質を持っています。
おそらくSさんの自己分析の通り、元々の「感情より論理を優先する」性格に加えて、頻繁な異動という環境が輪をかけ、患者さんとの情緒的な結びつきが求められる「かかりつけ薬剤師の同意」を取りにくくしていたのだと思います。頻繁な異動を繰り返した結果、時間をかけて環境に適応していくSさん自身の本来の性質が阻害され、より「広く浅く、効率的にこなす」スタイルに特化していったのでしょう。
この状況を改善するため、Sさんに残された選択肢は大まかに2つありました。
異動の少ない会社に転職し、じっくり腰を据えて苦手な「かかりつけ業務」に取り組むか。それとも、自身の強みである「マネジメント能力や冷静な分析力・効率化」が最優先される職場へシフトするか。どちらを選ぶかは、Sさん次第です。
タイプ診断を知ったSさんの感想・気づき
診断結果と分析をお伝えした時、Sさんは静かにこう語ってくれました。
思った通りだったか…というのが正直な感想です。わかってはいたんですけど、人の感情なんて理屈で理解しようと思ってできるものじゃないんですよね。
これから時間をかけて、相手を深く理解するコミュニケーションを覚えれば良いのかもしれませんが…でも僕はやっぱり、効率的なオペレーションを考えたり実行したりする方が好きなんです。
やっぱり僕は根っからの『効率派』なんでしょうね。だったら、マネジメントや効率がシビアに求められる職場に行きたい。患者さんのためになることをしたいとはもちろん思っていますが、感情に寄り添い、直接働きかけることはどうやら僕の仕事じゃなさそうだ…そう思いました。
診断のアドバイスに従って「救急病院」への転職を決意!
自分の特性を冷静に受け止めたSさん。次なるステップとして選んだのは、なんと「救急病院」でした。
「タイプ診断のアドバイスによると、僕のような策士タイプは『命の危機のような緊迫感が走る場でも、パニックにならず冷静な分析と判断ができる』とのことでした。それが最も求められる場所…それこそが、救急医療の現場だったんです」
救急の現場は、圧倒的なスピードと効率、そして何より冷静さが求められます。そこでの判断の根拠は、患者さんの「気持ち」に寄り添うことではなく、「目の前の命が助かる確率」という明確な事実です。
患者さんの命を救うための非常にやりがいのある仕事ですが、その一方で、重症患者さんと直接会話して情緒的なコミュニケーションを取る機会は多くありません。
他にもマネジメント力を活かせそうな企業系の仕事などはありましたが、Sさんは「今までのスピード感や的確な処理能力を一番活かせそうだ」と感じ、業態を救急病院一本に絞って転職活動を始めました。
ただでさえ狭き門である病院の求人。そこからさらに「救急」という業態まで絞るとなると、そう簡単には見つかりません。面接に受かる受からない以前に、そもそも求人が出ないのです。
しかし、Sさんはここでも冷静でした。
「現在の薬局の仕事に対して、今すぐ辞めなければならないほどの強烈な不満があるわけではなかったので。焦らず、気長に良い求人が出るのを待つことにしました」
結果として、待った期間はなんと2年。しかしその忍耐が実を結び、無事に地方の救急病院への転職に成功したのです!
「流石に病院未経験の状態で、都市部の高度救急病院への転職はハードルが高くて厳しかったのですが、地方の中核病院でなんとか念願の転職を果たしました」
気になる転職後の生活は?
見事に念願の病院薬剤師となったSさん。入職後の様子を伺ってみました。
注射剤の調製なんて学生の時の実習ぶりだったので、最初はひたすら調剤室にこもって調剤の練習と勉強の日々でした。最近になってようやく、峠を越えて容態が安定してきた患者さんの病棟へ行かせてもらえるようになりました。
そのまま退院して普通の生活に戻る方には退院に向けた服薬指導を、もう少し入院して療養が必要な方には、一般の地域病院に移るための申し送りを準備しています。
今やっていることは、まだ普通の病院の薬剤師の仕事と大きく変わらないと思います。先輩たちは日々ものすごく忙しそうですが、自分も早く一人前になって、最前線の救急の仕事がしてみたいですね!
少しずつ新しい環境に適応していくSさんの言葉からは、以前のような「かかりつけが取れない」という悩みや焦りは消え、自分の適性に合った職場で目標に向かって進む充実感が溢れていました。
今後やってみたいこと
最後に、Sさんの今後の目標を聞いてみました。
「薬局の管理薬剤師時代と比べると、年収は100万円以上減ってしまいました。でも、地方は物価も家賃も安いので、生活自体は意外なほど楽です。
今はここでしっかり経験を積むことが目標ですが、将来的には実家の近くにいた方が良いとも思っているので、数年経ったらこの経験を武器にして、都市部の救急病院へのステップアップにも挑戦してみたいですね」
持ち前の「冷静に勝機を見る」力を活かし、着実に自分のキャリア戦略を描いているSさん。彼のさらなる飛躍がとても楽しみです。
楠木かなえからのメッセージ
Sさんのストーリー、いかがでしたか?
「薬局薬剤師は対人スキルを磨かなきゃダメだ」「かかりつけを取らなきゃいけない」という業界のトレンドプレッシャーに、苦しさを感じている薬剤師さんは少なくありません。
しかし、全員が同じタイプの薬剤師になる必要はないのです。Sさんのように、自分の「論理的で冷静、効率を好む」という特性を正しく理解すれば、無理に苦手を克服しなくても、それが最強の武器として輝く場所(救急医療など)が必ず見つかります。
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