ナビゲーター:楠木かなえ
こんにちは!薬剤師の転職をサポートしている楠木かなえです。
今回は、「タイプ別薬剤師適職診断」を通して、自分の意外な強みと弱みに気づき、未経験の職種へとキャリアチェンジを成功させたNさんの体験談をご紹介します。MRから調剤薬局、そして品質保証(QA)職へと渡り歩いたNさん。明るくコミュニケーション能力が高そうなNさんが抱えていた、意外な悩みとは何だったのでしょうか?
Nさんの悩み:「営業トークができないこと」
Nさんは調剤薬局に転職して5年目の薬剤師。薬局に来る前はMRをしていました。
明るく朗らかな性格で、交友関係もそこそこ広く、患者さんからも従業員からも好かれています。一見するとコミュニケーション能力が高く、MRにも薬剤師にも向いていそうなタイプに見えますよね。
しかし、Nさんには深い悩みがありました。実は、MRを辞めたのもそれが原因。Nさんは、「販売や営業のトーク」がとてつもなく苦手だったのです。
薬局に転職したんだから、営業トークで悩む必要なくない?って思われるかもしれません。でも、薬局薬剤師も結構営業トーク、しているんですよ。かかりつけ薬剤師や在宅、ジェネリックへの変更など、客単価を上げるための提案って日常茶飯事ですよね。
もう5年目になるNさんですが、かかりつけの契約がまったくとれません。会社からも「在宅の獲得に力を入れるように」とうるさく言われているものの、患者さんに声をかけても「自分で取りに来るから大丈夫よ〜」と軽く流されてしまうのでした。
対物業務より対人業務が重視される時代。薬剤師はただ薬を渡す以上の提案ができなければなりません。「まさかMRでつまずき諦めたこのスキルに、薬局に転職してまで直面するとは…」とNさんは肩を落とします。
最近では会社からも、「Nさん、かかりつけ、もっと頑張らないと。もう5年近く同じ店舗にいるんだから、顔見知りの患者さんくらいいるでしょ?」と圧をかけられる始末。誰よりも多くの人に声をかけているのに成果が出ないため、会社にも信じてもらえず、Nさんはさらに頭を抱えていました。
なぜこの悩みを抱えてしまうのか -タイプ診断から分析-
そこで当サイトの診断ツールを利用していただいたところ、Nさんは【安心を与えるムードメーカー】タイプであることがわかりました。
💡 安心を与えるムードメーカータイプの特徴
明るく朗らかで、おちゃらけているように見える人もいますが、実は明るく振る舞っている裏に「自信のなさ」が隠れていることがあります。「雑談」という意味でのコミュニケーションは得意ですが、「信頼」が第一のビジネスにおいては、自信のなさが見抜かれ、顧客に「本当に大丈夫かな…」と不安に思われたり、話の表面だけしか伝わらず、核心的な部分を理解してもらえなかったりしやすい傾向があります。
また、「言われたことはきちんとできるが、自分で考えて動くのは苦手」なタイプでもあります。覚えた知識をそのまま伝えるのは得意ですが、「相手に合わせた提案」や「ゼロから自分で計画を立てること」が苦手です。
例えばかかりつけの提案なら、ただ「担当指名してお薬の情報を一元管理できます!」という表面的なテンプレを伝えるだけでは不十分です。
「◯◯さん、飲んでいるお薬結構ありますよね。飲み合わせは薬品名までわからないと医師や薬剤師でも判断できないので、全部把握している人に任せた方が安心です。毎回違う人だと記録を見ないとわからないですが、頭に入っている人だとスムーズだし確実ですよ」と、相手の状況に合わせた本質的なメリットまで説明しないと伝わりません。
また、もしかしたらNさんは「同意や契約が取れた後の手順」がわかっていないのかもしれません。
本人は頑張っているつもりでも、「本当に契約取れちゃったらどうすればいいかわからない」と慌てる未来が無意識に見えているからこそ、本質部分に踏み込んだ営業ができていない可能性があります。
ムードメーカータイプの方は、きちんと組まれた計画やマニュアルに沿って仕事をする必要があります。MRという仕事は自分の裁量で進める部分が多いため、Nさんにはハードルが高かったのでしょう。
今の薬局にきちんとした手順書があれば良いのですが、もしないのなら、しっかりしたマニュアルが整った薬局や、薬事申請や品質保証のような「売上に直結しない仕事」への転職が向いています。
タイプ診断を知ったNさんの感想・気づき
診断結果と分析をお伝えしたところ、Nさんは深く納得された様子でした。
確かに…かかりつけや在宅の意義については大学で習ってきてるからわかっているつもりでした。MR時代も自社製品のことはちゃんと知ってましたし。
でも、それをうまく相手に合わせて言葉にできないから、どこかで聞いたことある言葉を並べて、上っ面だけの売り文句で“声をかけているフリ”をしてたんだと思います。お客さんが興味を持ったら色々質問してくるでしょう? 想定外の方向から突っ込まれたら答えられないから、心のどこかで『興味を持たないでくれ』って思っていたんですよね。だから、本気で取り組んでいるようで、実はパフォーマンスしかしていなかった。やはり見抜かれちゃいましたか。
さて…僕はもともと薬剤師になりたかったわけでもないので、薬剤師職(対人業務)が向いていないのなら未練はありません。アドバイス通り、品質保証か薬事申請の仕事を探してみましょうか。
過去の執着がなく、あっさりと新しい道を受け入れる切り替えの早さも、ムードメーカーさんらしい長所です。
こうしてNさんは、品質保証や薬事といった売上に直結しない仕事を求め、転職活動を始めました。
タイプ診断のアドバイスに従って品質保証(QA)職に転職
転職を決めたあと、Nさんはすぐにマイナビ薬剤師に登録して、品質保証と薬事関連の求人を探してもらいました。
国家試験に受かりさえすれば就職先にはあまり困らない薬剤師は、一般企業への転職活動が苦手な傾向にあります。しかしNさんの場合は、新卒で一度MRとして一般企業に受かっている経験があったため、書類選考や面接の対策などでさほど苦労はしませんでした。
結果として、薬事申請と品質保証のポジションで、併せて3社から内定をもらうことができたのです。
提示された年収はどこも似たり寄ったりだったため、少し迷ったそうですが、Nさんは「品質保証職(QA)」を選びました。
性格診断によると、ムードメーカータイプは『まったく新しいものを世に送り出す仕事』よりは『今あるものをより良くする、維持する仕事』の方が向いているそうで。まさに後者に当てはまるのは品質保証かな、と思って決めました。年収も労働条件も似ている仕事で悩むことは多いと思うので、こういう選択の指針があると助かります。性格診断で指摘があった通り、本来の自分は自信のない優柔不断な人間なので(笑)
転職後の生活は?
念願の品質保証職へとキャリアチェンジを果たしたNさん。実際に働いてみて、その生活はどのように変わったのでしょうか。
最初は覚えることがたくさんあって大変でした。品質保証は、医薬品の製造がGMP・GQPなどの省令に則っているかの厳格な確認が仕事です。まずは『GMP・GQPとは何ぞや?何を徹底すれば良いのか?』という細かいルールを覚える必要がありました。薬局ではまず使わない知識だし、MR時代にもそこまで細かい知識は要らなかったので、完全にイチから勉強でしたね。
でも、繁忙の波がほとんどない仕事なので、就業時間内に勉強と作業をして、残業もほとんどなしで終われます。突発的な残業がないから、プライベートの予定は格段に立てやすくなりました。
Nさんは、今の仕事が自分の性格に非常に合っていると感じているそうです。
販売や営業の仕事は、「この知識をどう使ったらこの人の気持ちを動かせるだろう?」と、常に相手の反応を予測して自分で考える必要がありました。しかし品質保証の仕事は、「基準を理解し、基準に合うか合わないかを確認する」という一点に集中できます。
言葉にすると簡単そうに聞こえますが、医薬品製造もビジネスである以上、効率を求めたり忙しさでつい手を抜きたくなったりする場面があります。その中で、ブレずに厳格に基準を守り通すことは、決して誰にでもできることではありません。
「逆に『自分で考える』ことが得意な人ほど、『こうしたらもっと効率が良くなる』と決められたルールから良かれと思って逸脱したくなってしまうので、向かない職種だと思います。ルール通りにきっちり守ることが得意な、私みたいなタイプだからこそ輝ける仕事なんだと実感しています」とNさんは語ってくれました。
今後やってみたいことは?
最後に、Nさんに今後の展望を伺いました。
薬事申請や品質保証は、規模が大きすぎない会社だと、管理薬剤師が1人で兼任して担っていることも多いのだとか。今回は品質保証の部署に入りましたが、ゆくゆくは薬事申請の業務も経験しておきたいですね。そして将来的には、企業内管理薬剤師を目指すのも良いかもしれません。自分みたいな自信のない人間でも、ちゃんと活躍できる合う仕事があるんだってわかって、本当に良かったです。
楠木かなえからのメッセージ
Nさんのストーリー、いかがでしたか?
明るくてコミュニケーション能力が高そうに見える人でも、「売上や契約を伴う営業トーク」となると、プレッシャーや自信のなさから力を発揮できないことは多々あります。
「薬剤師なんだから対人スキルを磨かないと!」と無理に自分を追い込むのではなく、Nさんのように「決められた基準を厳格に守る」「今あるものを維持する」といった自分の得意な方向へ環境をシフトするのも、立派なキャリア戦略です。
品質保証や薬事といった企業での働き方に興味を持った方は、ぜひ企業転職に強いエージェントの情報をチェックしてみてくださいね!