ナビゲーター:楠木かなえ
こんにちは!薬剤師の転職をサポートしている楠木かなえです。
今回は、「タイプ別薬剤師適職診断」で見事、ご自身の強みを活かせるキャリアを手に入れたIさんの体験談をご紹介します。大手製薬企業のMRとしてトップクラスの業績を上げていたIさんですが、ある壁にぶつかり、そこから全く異なる「研究開発職」へと見事転職を果たしました。手段を選ばず一直線になってしまう性格をどのように活かしたのか、必見です!
Iさんの悩み:「業績が全てじゃないの?」突然のクレームと挫折
Iさんは、大手製薬企業でMRとして3年目を迎える優秀な若手社員。これまでの業績は非常に良く、順風満帆なキャリアを歩んでいるように見えました。しかし最近、担当地域の医師たちから「かなり強引な押し売りをしてくるので困っている」というクレームが相次ぐ事態になってしまったのです。
上司からはきつく叱られましたが、正直『業績を出すためには、多少強引な手段に出ることも必要なのでは?』ときょとんとしてしまったんです。会社としてクレームに注意するのは当たり前だけど、結局最後は業績がものを言う世界だと思って、自分のやり方を変えませんでした。
ところが、期末の業績を見ると、Iさんが担当している地域の売上が激減。Iさんの強引なやり方に反発した医師たちが、その製薬企業の薬を新規で処方するのをやめてしまっていたのです。
上司からは「だからあれほど言ったのに…。強引なプッシュも時には必要かもしれないが、相手の都合を考えない強引すぎる営業は、顧客との信頼を損なうんだよ」と諭されました。数字という結果を突きつけられては、Iさんも何も言えません。「途中まではうまくいってたのに、なんでこんなことに…」と、初めての大きな挫折に深く悩むことになりました。
なぜこの悩みを抱えてしまうのか? -タイプ診断から分析-
そんなIさんに「適職診断ツール」を受けていただいたところ、【冷静に勝機を見る策士】タイプであることがわかりました。
冷静かつ聡明で、仕事で成果を挙げやすい優秀なタイプですが、このタイプにはある落とし穴があります。それは、「放っておくと、勝機を得るために手段を選ばなくなるところがある」という点です。
💡 冷静に勝機を見る策士タイプの特徴
目的達成能力が非常に高く、最短距離で成果を出す賢さを持っています。しかし、その合理性ゆえに、時に周囲の感情や人間関係の摩擦を軽視してしまいがち。「成果さえ出せばいい」という思考に陥りやすく、行き過ぎをコントロールしてくれる環境や、適度な管理者の存在が不可欠なタイプです。
まさにMRのような「1人で外回り営業をする」という、上司の監督から離れる職種では、成果は出せてもトラブルが絶えない、ということが起こりやすいのです。Iさんも「強く押す=成果が出せる」と良かれと思ってやっていたため、自分が信頼を損なうほど強く押しすぎているという自覚がありませんでした。
独り立ち以降は他のMRの仕事ぶりを見る機会もないため、独自に編み出したやり方の結果がこれでした。Iさんのようなタイプは、ある程度誰かが近くにいてコントロールしてくれる環境の方が良く、適度な管理下に置かれた上でこそ、その知恵は最大限の力を発揮するのです。
タイプ診断を知ったIさんの感想・気づき
この診断結果と解説を聞いたIさんは、自分の行動を深く振り返り、ハッとさせられたと言います。
あのとき、上司の言葉に対して素直に聞く耳を持っていれば…って何度も後悔しました。でも、3年目にもなって、僕はあんな強引なやり方しか知らないんです。今更イチからやり方を模索して、成果や失った信頼を取り戻せるまでに、何年かかるだろうと途方に暮れました。
失った信頼を取り戻す努力も必要でしょう。しかし、性格診断で導き出された『成果を出すためには少々強引な手段も厭わない』は全くその通りだと思っていて。この先、信頼や成果をなかなか取り戻せずに行き詰まったら、焦ってまた反則スレスレの技を使ってしまう気がするんです。
さすがに今回の失敗と同じようなことはしないと誓いつつも、Iさんは自分の中にある危うさに気づきました。「僕が『良いこと思いついた!』と閃いたアイデアが、実は業界にとってタブーかもしれないわけです」
もちろん、上司にこまめに相談してから動くようにすれば良いのですが、「野放しにしておくと自信過剰になって聞く耳を持たなくなりがち」というアドバイスを踏まえ、Iさんは自らの意思で環境を変える(転職する)ことを決意しました。
診断のアドバイスに従って「開発研究職」へ転職!
ここまでの経験とタイプ診断のアドバイスを踏まえ、Iさんはまず「上司の監視下から離れる外回りや出張の多い仕事」を選択肢から外しました。
さらに自己分析を進めると、Iさんの得意なことは「何か言葉や表現など、新しいものをアウトプットすること」だと分かりました。それを聞いて真っ先に浮かんだのはメディカルライター。ただ、担当業務によっては取材のための出張もあると聞き、候補には入れるものの優先順位を下げることにしました。
「とするとあとは…あ、製薬企業で研究!」
実はIさん、学生時代は製剤学系の面白い研究に熱中していました。MRとして医師と話す際も、製剤学目線での薬の素晴らしさを熱く語りまくっていたほどです。「そうだな、語るだけじゃなくて今度は自分が作る側になるのもいいよな」と思い立ち、研究開発職への道を考え始めました。
6年制卒で大学院には行っていなかったため、「研究するなら大学院で博士くらいまでとった方がいいのかも…」と不安もありましたが、転職エージェントからの「とりあえずチャレンジしてみるだけはタダですよ!(笑)」という言葉に背中を押されました。通っていた大学院の入学手続き等も調べつつ、とりあえず片っ端からバイオ系の研究開発職に応募しまくりました。
何社も受けて、そろそろ大学院の方を真剣に考えようかなと思い始めた頃。なんと、あまり有名な大企業ではないものの、医薬品の添加剤を作っている会社から内定をもらうことができたのです!
決して偶然ではなく、学生時代に製剤学を究め、MRとしての現場感覚も持つIさんだからこそ評価された結果でした。こうしてIさんは就活を終え、晴れて研究者への道を歩み始めたのでした。
気になる転職後の生活は?
新しい仕事はまさに製剤学の研究。大学生の頃を思い出し、すっかり若返った気分だとIさんは笑います。
会社に籠ってひたすら研究するので、残業時間は月に50時間とかになってるかもしれません。MRの頃よりエグいことになってますが、楽しいから全然いいやって思えます。
営業みたいに人の心を動かす仕事は、自分の思い通りにならなくてつい強引な手を使ってしまっていました。でも、研究は成果が出るかどうかが完全に自分次第なんです。もちろんチーム内で協力はしますが、結果が出ないことを人に当たる必要もない。成果共有会があって、他の人の失敗も今後の研究を考えていく上で参考になるから、むしろ楽しいんです。
MRの仕事を投げ出してしまったみたいで未練や心残りが全くないとは言えませんが、この研究職を経験してみて「あぁ、自分はMRには合っていなかったんだな」と、心から納得できているそうです。
今後やってみたいこと
最後に、新しい環境でイキイキと働くIさんに、今後の目標を伺いました。
「今は賦形剤などの原料に関する研究がメインなんですけど、今後はもっと踏み込んだ『製剤設計』を研究したいですね。そうすると、もっと大きな会社を目指さないといけないかも。MRをやっていたおかげでプレゼンには慣れていますし、ぜひ学会発表などにも挑戦していきたいです!」
自分の性格の「強み」と「弱み」を客観的に見つめ直し、適材適所の環境を手に入れたIさん。策士としての知恵は、これから新しい薬を生み出す研究室という「適度な管理下」で、存分に発揮されていくことでしょう。
楠木かなえからのメッセージ
Iさんのストーリー、いかがでしたか?
「一度つまずいてしまったから」「このやり方しか知らないから」と、自分を追い詰めてしまう薬剤師さんは少なくありません。しかし、Iさんのように自分の「タイプ」や「陥りやすい落とし穴」を客観的に知り、思い切って環境を変えることで、自分のポテンシャルを最大限に活かせるキャリアが開けることもあります。
企業の開発研究職や、その他のオフィスワークなど、薬剤師の資格と知識を活かせるフィールドは、実は病院や薬局以外にもたくさん広がっているんです。
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